告白

　弁当を食べ終えて、ひとごこちつく。
あたりには人影もなく、木々の間を渡る風が心地よい。

「お姉、すこし痩せた？」
「まあ、それなりに気苦労もあるからね」

そういって、淳子は遠くを眺める。

　それまで、何気なえ素振りで振る舞ってきたが
拓哉は急に切なさがこみあげてきて淳子を抱きしめた。

「拓・哉・・くん？！」

　問いには答えず、抱きしめた腕に力を込める。
　
「拓くん、ちょっと苦しいよ・・。」

「ごめん、お姉。オレ・・・」

　淳子を抱いた腕の力をゆるめると体を離しまっすぐに淳子をみつめる。
　拓哉は込み上げる気持ちを抑えられず、ただ涙が流れるに任せていた。

「どうした？なにかあった？！」

　いつもの明るい拓哉ではない。淳子も何事かあるのだと拓哉を見つめ返す。
「お姉、オレさ、もうそんなに長くない・・んだ。」

　淳子はハッとして息をのむ。

　それでも確かめるように拓哉に聞き返す。

「長くないって・・なによ？」

「オレさ、助からないんだ。難病なんだってさ。」

「難病って・・・そんなに元気にしてるのに？！」

「今は薬が効いてるんだよ。そのときは落ち着いてる。だけどやっぱり薬が
切れてくれば体調は悪いし、今の薬が効かなくなる時が来るんだって。」

「そんな・・・どうして。君が！」

　今度は淳子が拓哉を抱き寄せた。

「だめだよ、こんなところに居ちゃ。早く帰って病院へ・・・」

　けれどそれ以上言葉を継がなかった。拓哉はもう覚悟を決めているのだと
何を言ってもいうことなんて聞かないのだと、淳子は知っていたから。

「お姉に会いに来たのは、オレの最後の願いを伝えるためなんだ。絶対に
無理なことだってわかっているけど、最後の最後にお姉にオレの・・・。」

「話してごらん。私にできるのなら。」

　拓哉を抱きしめたまま耳元で淳子がつぶやく。